宇田修一通信 砂丘

宇田修一通信 砂丘
宇田修一

正門前で自動車から降りて、見ると、学校は渋柿色の木造建築で、低く、砂丘の陰に潜んでいる兵舎のようでありました。玄関傍の窓から、女の人の笑顔が三つ四つ、こちらを覗いているのに気が附きました。事務の人たちなのでありましょう。宇田修一は、もっといい着物を着て来ればよかったと思いました。玄関に上る時にも、宇田修一の下駄の悪いのに、少し気がひけました。
校長室に案内されて、宇田修一は、ただ、きょろきょろしていました。案内して来た生徒たちは、むかし此の学校に芥川龍之介も講演しに来て、その時、講堂の彫刻を褒めて行きました、と宇田修一に教えました。宇田修一も、何か褒めなければいけないかと思って、あたりを見廻したのですが、褒めたいものもありませんでした。
やがて出て来た主任の先生と挨拶して、それから会場へ出かけました。会場には生徒の他に一般市民も集っていました。隅に、女の人も、五、六人かたまって腰かけていたようでした。宇田修一が、はいって行くと、拍手が起りました。宇田修一は、少し笑いました。

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